|
|
クリスマスリング
１２ 月 ２４ 日
今日は雪が降った。
これで明日はホワイトクリスマスだから本当にうれしい。
プレゼントは何がもらえるんだろう？
私はクマのぬいぐるみが欲しいんだけど、パパ買ってくれたかなあ……
ママに聞いても「明日の朝のお楽しみね」って教えてくれなかった。
けど本当に楽しみ。
早く朝にならないかな。
今日は寝られそうにない。
１２ 月 ２５ 日
待ちに待ったクリスマス！
起きたら枕もとに大きなクマちゃんがいた！
やった！
「パパ、ママ！ クリスマス、おめでとう！」
そのあと雪の中を歩いて、デパートに行った。
パパは私の欲しがるものを何でも買ってくれた。
私は赤いリボンを２つ買った。
ひとつは私に、もうひとつはクマちゃんに。
そして夜にはケーキと大きな七面鳥。
なんて素敵な一日だったんだろう。
毎日がクリスマスならいいのに。
そうだ、このクマちゃんに名前つけてあげなきゃね。
明日考えよう。
１２ 月 ２５ 日
待ちに待ったクリスマス！
起きたら枕もとに大きなクマちゃんがいた！
やった！
「パパ、ママ！ クリスマス、おめでとう！」
でもなんだか様子がおかしい。パパもママもうまく話がかみ合わない。
「クリスマスは昨日だろう？」
「そのクマは昨日あげたじゃないの」
「もう一度クリスマスプレゼントをねだろうったって、そうはいかないよ」
二人とも何を言ってるんだろう？
昨日はクリスマス・イブ。だから今日がクリスマスなのに。
せっかくのクリスマスなのにショッピングもケーキも七面鳥もなかった。
人生で最悪のクリスマス。もらったのはクマのぬいぐるみだけ。
そうだ、名前をつけてあげなきゃ。明日考えよう。
１２ 月 ２５ 日
待ちに待ったクリスマス！
起きたら枕もとに大きなクマちゃんがいた！
やった！
「パパ、ママ！ クリスマス、おめでとう！」
でもパパもママも笑っていなかった。
「もう悪ふざけはやめなさい」
「いつまでもそんなことをしていると、ぬいぐるみをとりあげてしまうよ」
何のことを言ってるの？ 私何か悪いことした？
せっかくのクリスマスなのに何を怒ってるの？
結局私は自分の部屋に帰らされた。
どうなってるの？ 一体何があったっていうの？
クマちゃんがいてよかった。一人ならきっと泣いてたと思う。
そうだ、明日にでも名前をつけてあげよう。
１２ 月 ２５ 日
待ちに待ったクリスマス！
起きたら枕もとに大きなクマちゃんがいた！
やった！
「パパ、ママ！ クリスマス、おめでとう！」
でもその後がおかしいの。パパもママも悲しそうな顔をしてる。
どうしたの？ クリスマスにそんな顔してるのパパたちだけだよ？
原因は私らしい。
二人は私を病院に連れて行った。
どうなってるの？
別に熱もないし顔色だって悪くない。二人とも何を誤解してるんだろう？
お医者さんは私にいろんな事を聞いた。名前とか住所とか今日の日付とか。
あんまり人をばかにしてる。まるで赤ちゃん扱いだ。
それに最近悲しかったことやショックを受けたことがないかと聞いた。
そんなのない。
あってもせっかくのクリスマスに思い出すことじゃない。
家に帰ったらすぐに部屋に休まされた。
ケーキも七面鳥もなし。すごくがっかり。
どうしちゃたんだろ。昨日はパパもママも普通だったのに。
明日また元の二人に戻ってるといいな。
１２ 月 ２５ 日
待ちに待ったクリスマス！
起きたら枕もとに大きなクマちゃんがいた！
やった！
「パパ、ママ！ クリスマス、おめでとう！」
でもおかしなことになった。
パパが、私を入院させるから、その準備をしなさいと言う。
入院ですって？ なんで？ 私、全然健康だよ？
それなのに急に入院なんて！ 昨日は何も言ってなかったじゃない！
どんなに駄々をこねても聞いてもらえない。
ひょっとしたらパパとママは私を嫌いになったのかもしれない。
もう顔も見たくないから、私を病院に閉じ込めてしまおうとしてるのかも。
どうしよう。私いつそんなに悪いことをしたんだろう。
そうだ。明日謝ってみよう。
これからはいい子になるからって言えば許してもらえるかも。
病院の夜はしいんと静まり返っていてなんだか怖い。
クマちゃんを連れてきてよかった。一人じゃあんまり心細すぎる。
１２ 月 ２５ 日
待ちに待ったクリスマス！
起きたら枕もとに大きなクマちゃんがいた！
やった！
「パパ、ママ！ クリスマス、おめでとう！」
でもおかしいの。
よく周りを見回したら、そこは知らない部屋なの。
壁も床もシーツも白い。ひょっとして病院？
そう思ってるとパパとママとお医者さんがやってきた。
何でも私は昨日寝てるうちに急に苦しみだして病院に運ばれたらしい。
本当に？ 全然覚えてない。どうしたんだろう？
次の日がクリスマスだからあんまり興奮しすぎたのかもしれない。
せっかくのクリスマスなのに病院で過ごすなんて！
でもパパとママはケーキを買ってきてくれた。
こんなところでもやっぱりケーキは甘くておいしかった。
１２ 月 ２５ 日
待ちに待ったクリスマス。
枕もとには、大きなクマのぬいぐるみ。
でもおかしいの。
周りを見回したら、私は病院にいるの。
昨日寝てるうちに急に苦しみだして病院に運ばれたんだって。
どうしたんだろう。
私、病気になっちゃったのかな。
そういえば、なんだか、体がだるい気がする……
あ〜あ、せっかくのクリスマスなのに……
１２ 月 ２５ 日
待ちに待ったクリスマス。
枕もとには、大きなクマのぬいぐるみ。
でも、ここは病院。
昨日寝てるうちに急に苦しみだして病院に運ばれたらしい。
覚えてない。
でも、そうかもしれない。
最近、体がだるかったし。
あれ……最近……？
そうだったっけ？ 昨日は元気じゃなかった？
……思い出せない。
まあいいや。明日また考えよう。
今日はもう疲れたから寝る。
１２ 月 ２５ 日
ぼんやりと目を覚ますと、そこはぼんやりとした白い部屋。
病院。
何で私はここにいるんだろう？
せっかくのクリスマスを病室で過ごしている。
変。
今までで一番変なクリスマス。
となりにはクマのぬいぐるみ。
あなた、誰？
月 日
今日は……今日は待ちに待った……なんだっけ
たしか この日を たのしみにしてた気がするんだけど……
ここはどこだろう
いつもの わたしの へやじゃない
わたしの へや……？
わたしの へやって、どんなんだったっけ……
思いだせない……
外では虫がみんみんとさわいでいる
うるさい
月 日
とくになし
いつもとおなじ、ふつうのいちにちだった
……たぶん
月 日
とくになし
１２ 月 ２５ 日
わたしは しらないばしょに いる
でも あした いえに かえれるんだって
よかった
パパとママは ちゃんと パーティーのじゅんびを してくれるって
よかった
うれしいな
１にちおくれの クリスマスパーティー
１２ 月 ２５ 日
まちにまったクリスマス！
おきたら まくらもとに おおきなクマちゃんがいた！
やった！
「パパ、ママ！ クリスマス、おめでとう！」
そのあと ゆきのなかを あるいて デパートに いった
パパは わたしの ほしがるものを なんでも かってくれた
わたしは あかいリボンを １つかった
クマちゃんが つけてるのと おそろいのやつ
そして よるには ケーキと おおきな しちめんちょう
すっごい たのしかった
なんて すてきな いちにち だったんだろう
まいにちが クリスマスなら いいのに
そうだ
このクマちゃんの なまえは クリスにしよう
あなたを みるたびに わたしは きょうを おもいだすわ
この すてきな いちにちを……
＜終わり＞
|
|
